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国際コラムニスト・加藤嘉一氏、名古屋中央卸売市場を視察:コメ不足・物価高騰下の食の流通の最前線

2025年6月6日、国際コラムニストの加藤嘉一氏が、名古屋市熱田区日比野に位置する名古屋中央卸売市場を訪問しました。普段の生活ではなかなか目にすることのない「野菜の仲卸」という業態と、その現場の実情を視察しました。

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市民の台所を支える仲卸の現状

訪問先は市場内の石橋青果株式会社

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加藤氏は、昨今のコメ不足物価高が消費者の購買意欲に与える影響について鈴木社長から直接取材を行いました。特に、物価高に起因する「野菜離れ」の深刻さについて現状を伺いました。

今回の訪問で加藤氏が目の当たりにしたのは、中央卸売市場が抱える厳しい現実でした。約30年前には60数件あった仲卸業者が現在では20数件にまで減少している現状、そして市民の食生活を支える重要な施設でありながら、多くの部分が屋根のない古い設備であることにも厳しい運営を感じました。

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東京の豊洲市場が衛生面や作業効率の面で刷新され、首都圏2000万人の食を支える拠点として機能しているのに対し、地方の市場が同様の刷新や設備拡充を必要としている現状も今回の訪問で浮き彫りになりました。

 

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「商品」だけではない食料の価値:生産者保護の重要性

面談の中で鈴木社長は、食料が単なる「商品」として売買されるものではないことを強く語りました。食料は生産者と市民の生活と密接に関わり、生産者の保護こそが食料自給率の維持に直結するという重要な視点が示されました。市場における仲卸の役割は、単なる流通機能に留まらず、どんな生産物にも値段をつけて買い取ることによって生産者の継続的な生産活動を支え、ひいては日本の食料供給の安定に貢献していることが明確になりました。加藤氏は、もし流通が100%商業ベースになってしまった場合、生産者との共生の道が果たして維持できるのかという鈴木氏の視点を重く受け止めていました。

今回の訪問は、加藤氏にとっても日本の食料供給システムの複雑さと、その根底にある生産者保護の重要性を再認識する貴重な機会となりました。

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2025年6月6日
文責:江村典子